高橋聰のシネマあれこれ「島にて」





 4、5月は新型コロナウイルス拡大防止の自粛でほとんど家に閉じこもって過ごした。家人が熱を出し「コロナか」とあわてることもあったが奇跡的に逃れることができて、多くの人が同じようなことを体験し、あるいはそれに巻き込まれた人がいると思うと、心が痛いところである。6月に入ると少しはコロナ禍も落ち着いてきていると思うが、未知のウイルスだけに予断は許さない。
 先月に「仮説の映画館(ネット配信)で紹介した想田和弘監督の「精神0」がミニシアターの元町映画館などで上映が始まったと思われる。同じく仮説の映画館で上映スタートしたドキュメタリー映画「島にて」(東風配給)も元町映画館ほかの映画館で随意上映が始まるだろう。山形県酒田市の酒田港から定期船で75分のところにある有人離党、飛島にカメラを持ち込んで現在140人が暮らす地元の人々の生活をスケッチした作品である。
 飛島小中学校の生徒は中学3年生になったばかりの渋谷新君一人だけである。映画は彼が授業を受けて卒業し、酒田市の高校に通うために島を出ていくまでの一年間を追いかけている。島に移住し介護の仕事をしている新君の両親、そして昔から島に住むお年寄りたちとの交流、あるいはUターン、Iターンで島に来た人たちが新しい生き方を模索しながら生きてゆく姿が淡々と映し出される。
 島の面積は2.75㎢で全域が国定公園に指定されている。昔は漁業や農業で生計を立てていた人たちは今、「わびしくなった…」とつぶやく。それでも、「合同会社とびしま」を若者たちで立ち上げた本間当さん(38)は「ここでもう一度生きよう」と仲間に呼びかける。大宮浩一(61)と女性の田中圭(33)の新旧監督が組んでいい仕事をした作品。励みになり、元気になれる映画である。(映画評論家・高橋聰)

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